21 公務員でもノーベル賞はとれる。アインシュタインの頭脳はいらない。ただ、アインシュタインと同じ選択をするだけでいい。

ビジネスの知見

あなたもアインシュタインの生き方を目指せる

山口周は著書『ニュータイプの時代』の中で、複数の組織と横断的に関わることの大切さを推奨しています。現在から将来にかけて、市場は「巨大組織」と「フリーエージェントを中心としたプロジェクト的な組織」の2極によって形成され、そこでは極端にリスクの異なる2つの職業を同時に持つ「バーベル戦略」が必要だと言うのです。ちなみに、この「バーベル戦略」とは、もともとナシーム・タレブという人が提唱した学説です。

たとえば、「90%会計士、10%はロックスター」といった、リスクに非対称性のある組み合わせです。「非対称性」とは、「バランスが取れていないこと」を意味します。

さらに典型例としてアインシュタインを挙げています。彼が特許庁で審査官の仕事を務めながら、余暇の時間を利用してノーベル賞受賞のきっかけとなった「光量子(こうりょうし)仮説」の論文を書いたというものです。

アインシュタインの例からわかるように、「バーベル戦略」とは、

ある程度安定した職業を片手で持ちながら、どこかで大化けするアップサイドのリスクを人生に盛り込んでおく」という考え方に基づいて人生をデザインすることです。

VUCAという言葉があります。VUCAとは、社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になっている状態を示す造語です。予測が困難な要因として時代の4つの特性をあげ、頭文字を取って作られました。

V:Volatility(変動性)
U:Uncertainty(不確実性)
C:Complexity(複雑性)
A:Ambiguity(曖昧性)

世界が曖昧で不確実で予測のできないVUCAの時代を迎えつつある今、不確実性を身につけて活かすといった考え方がクローズアップされているわけです。

山口は、『ニュータイプの時代』で、次のように指摘しています。

人生から不確実性を排除してしまうことは、人生が「大化け」する機会を排除してしまうことだ。
『ニュータイプの時代』P199

さらに、山口は企業戦略の視点から「バーベル戦略」を「企業のポートフォリオ」という考え方に発展させています。安定的にキャッシュを生み出す「今日の事業」を営みながら、将来的に大化けするかも知れない複数の「明日の事業」へと着手することが企業に求められているというものです。

ひたすら「楽をする」ことだけを考える

では、学校を例にとって考えてみましょう。
学校が利益を生み出す機関としてその存在意義を明確にしたいと望むのであれば、企業と同様に、「今日の事業を営みながら、複数の明日の事業へ着手すること」が求められます。つまり、進路指導や生徒指導、部活動指導をいつも通り行いながら、新たな「事業」を創造し、実現に向けて動き出さなければいけません。

多くの教師は忙しく、日々の仕事を回すことで精一杯のようですが、それでも「明日の事業」について発想を膨らませ、意見交換をしていくことが必要なのです。なぜなら、「明日の事業」とは、「従来の学校の価値観から大きく離れたきわめて斬新なアイディア」というよりも、「現在の仕事を取捨選別し、精選されたものを深化すること」に焦点化することだからです。

簡単に言うと、
「いかに楽をするか」
「いかに強みを生かすか」
ということです。

厳しい言い方をしますが、学校現場ではこの「楽をする」といった発想が皆無です。「一生懸命やってる感」が貴ばれる現場ですから、やむを得ない話ですが、結果として何も変わらず何も生み出さないのであれば、その仕事は捨てなければいけません。この「捨てられない」ことについても山口は書籍『ニュータイプの時代』の別項で触れていますが、ここでは「捨てる」ことを前提として話を進めます。

学校では方針をいきなり大きくシフトすることは好まれませんし、うまくいかないことが多いものです。ですが、いきなり大きな改善を行わなくても、たとえば「不要な仕事を切り離し、得意領域を伸張させること」なら無理なく取り組めるはずです。

学校という組織は変化を好まないからこそ、微調整を不断に行うことに価値があるのです。そして不要な事業を切り捨ててはじめて、アイディアを試してみようという気持ちも生まれます。

ロックスターは目指さなくていい

ここまで学校組織の在り方について述べてきましたが、次は個人レベルで何ができるのかについて考えてみます。

教師をしながら、「明日の事業」に着手する。タレブの言う「バーベル戦略」に倣った場合、「90%教師、10%教師以外の専門領域」と言うことになるでしょうが、では、あなたなら何に10%のコストを払いますか?

「大化けする10%」でフォーカスすべきは何か?
この質問に対し、私なら「起業準備」と答えます。いえ、正直に言えば、現在の私にとっては「教師40%、起業準備60%」が正しいでしょう。

起業準備がもたらすメリットは、計り知れません。

セミリタイアに向けたキャリアプランの構築、
「価値提供の本質」が学べる機会の取得、
ビジネスをする上での人間心理への精通、
そして何より、本業である学校教師という職業の相対化と深化。

ざっと挙げるだけでこれだけ大きなパラダイム転換がもたらされます。

しかも、ひとくちに「教師40%」とはいうものの、若かった頃の「教師100%」の私よりも、大切なことに気づいた後の「教師40%」の方がきわめて価値が高い。そう思わせるのは、「起業準備」という「不確実性」です。

教師は社会的・経済的にきわめて安定している職業と言えますが、一方で本業とパラレルで不確実性を追求することは、教師という職業を多様な観点から見つめ直す絶好の機会になります。

また、誤解のないようにいえば、「起業」自体は不確実性の高いことではありません。価値提供の本質を理解した上で正しいやり方を手順通りに行えば、誰でも成功できると言われています。つまり、教師の仕事と起業準備を両立させることは、実はほとんどリスクのない取り組みであるということです。ただ、多くの教師が「そのような発想」を持っていないだけ、なのです。

教師にこそ「不確実性」が必要

私が言いたいのは、教師が起業という不確実性を追求する行為そのものが、本業に想像以上の刺激を与えてくれるという点です。

ビジネスの本質とは、多くの人に価値を提供し、喜んでもらい、対価を得ることです。その価値提供の観点から、「学校の利益とは何か?」「生徒や同僚、保護者に喜んでもらう(信頼してもらう)にはどうしたらいいか?」といったことを考えるだけで、心がワクワクし、いろんなアイディアが生まれます。「起業準備」という不確実性が、「教師40%」の私の力を、80%にも120%にもしてくれる。教師のとって「ビジネスをする」という視点が本業との相乗効果をもたらし、あなた自身を「大化け」させてくれる材料になるわけです。

あなたも「教師〇%、起業準備□%」の組み合わせで戦略を立ててみてください。「起業準備」のところに「趣味」を入れてはいけません。「趣味」とは一般に、多くの人をつなぐことはありませんし、社会への価値提供につながる可能性もそれほど高くないものです。その意味で、「趣味」は、人生を豊かにはしないのです。

あなたが教師の仕事とパラレルで進める領域が、もし「起業準備」でなかったとしても、ぜひあなた自身と社会にとって利益をもたらす領域にフォーカスしてみてください。その領域は、少なくともあなたの本業とがっぷり四つが組めるものでなくては、あなたがこの世に生まれた意味がないのです。

 

「バーベル戦略」における「不確実性」とは、つまるところ「チャレンジ」だと私は思っています。

学校社会や教師の世界から離れ、
どれだけ価値提供につながるチャレンジができるのか。

この質問に対する答えを、真剣に考えてみてください。

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