問題:「古本屋の無人店舗経営は、立派なビジネスモデルになる」。そう言える条件を挙げなさい。

トピックス

答え:条件は3つです。
具体的な内容は、順を追って話します。いきなり条件だけを挙げてもピンとこないと思いますから。

では改めて。みなさんこんばんは角松利己です。
今回は、無人店舗経営に必要な視点について、私の実体験をもとに話します。もしあなたが、これから「無人店舗経営をしてみたい!」と考えているのであれば、参考になると思います。
では、行きましょう。

古書店のテーブルにあった、落書き帳用のペン。
実際に書いたメモは、記事の最後に載せておきました。

無人古書店のブックオーナー契約が終了

2021年4月4日(日)に、出品していた蔵書を回収してきました。
ブックオーナーの一人として市内にある古書店に出品していた期間は、2020年2月頃から2021年3月末日まで。約1年間、本を置かせてもらっていたことになります。

バックヤードには、段ボール箱が4つありました。そのうちの3箱には売れずに残った本が詰められ、残り1箱には100均で購入したフォトスタンドが数個。出品した本のジャンルごとに簡単な紹介文を書いたカードを、フォトスタンドに乗せてディスプレイしていたものです。

本を回収して帰るだけだったためわずか20分程度の滞在でしたが、ブックオーナーとしてはおそらく最後の来訪になると思い、何枚か写真を撮りました。

入り口を入ってすぐの様子です。3面の壁には天井まで本が並んでいます。
中央テーブルには特集が組まれています。

その古書店のシステム

・場所は地方政令指定都市の旧市街地中心部から少し外れたところ。周囲はオフィスと昔からの住宅地。
・ビルの1階スペース(20畳くらい?)
・入口兼出口はオートロックで個別配布された暗証番号入力。
・商品は基本古書で、複数のブックオーナーが棚単位で出品。
・支払いはタブレット端末を使ってPaypay決済。


ざっくり言うと、こんな感じです。

無人古書店を経営するオーナーのメリット

私は蔵書を出品する「ブックオーナー」ですが、ここで言うオーナーは、「店舗を経営している人」を指しています。このスペースを古書店として提供し、システムを回している人のことです。

さて、その「オーナー」のメリットですが、
人件費がほぼゼロで、ランニングコストも格安である点です。

オーナーは日常的にそこにいられないので、コストをかけずに回していくために、店を無人店舗にすることを考えました。

必然的に、ランニングコストは安くなります。と言うか、コストをかけずに済ませるしかありません。エアコンと照明、BGMを流すためのスピーカーを設置して、決済端末を用意。出入口はオートロックにして24時間防犯カメラを設置。利便性の向上と防犯対策に配慮しています。

よってランニングコストはほとんどかかっていないはずです。
光熱費とPaypayの契約、くらいでしょうか? ブックオーナーの入れ替わりに伴うディスプレイ変更や通年イベントを催す際はオーナー自ら体を使う必要も出てきますが、基本的には出納関係と防犯上のチェックを行うことメイン業務であることが予想されます(もちろん、煩瑣な仕事は山ほどあると思います・・・)。

立地条件的にも、オフィスと住宅が混在した比較的閑静な場所の通りに面しているので、立ち寄りやすいと言えます。

無人古書店を訪れる顧客のメリット

では、無人古書店に足を運ぶ人には、どんなメリットがあるんでしょうか?
「無人」×「古書店」という2つの観点からメリットを挙げてみます。

ではまず、「無人」であることのメリットから。

一般的な書店では、自分以外にも他のお客さんが何人か訪れることがありますよね。でも「無人」であれば、タイミングさえ合えば「自分一人だけの空間」を楽しむことができます。本を探すという行為はデリケートです。自分の関心ごとがそのまま選書に直結するため、どんな書棚の前に立っているか、どんなタイトルの本を手にしているかで、心の中を見せてしまっているような錯覚を覚えるものです。

しかし「無人」であれば、気兼ねなく本を選び、手に取り、購入までのプロセスを味わうことが可能です。

でも、あなたはこんな心配をしていませんか?
「いくら『無人』と言っても、登録制の書店なら他のお客が入ってくる可能性だってあるでしょ?」

・・・確かに、そのようなこともあるでしょう。実際、以前私がブックオーナーの一人として自分の棚の模様替えをしていた時に、お客さんが入ってきたこともありました。大量の本を段ボールから出し入れしていたので、「・・・こんにちは。この棚のブックオーナーです。」と身分証明することは忘れませんでした(汗)。「泥棒なの!?」と思われたら困りますからね。

で、他のお客と一緒になることについてですが、これは、一般的な書店とはかなり違った反応になると思います。

無人古書店に来る人は、無人古書店の性質を十分に理解している人たちである、ということです。
その性質とは、「私と同じように思っている人たちが、ここにやって来る」ということです。

つまり、ここを訪れるのは「静かに自分の気持ちと向き合いたい人たち」で、そういった人たちは、互いの気持ちをよくわかっている。いたずらに視線を相手に向けることもないし、逆に視線を向けられる心配もしていない。何も言わなくても、意識の共有が図れている。

隣にいる客は、「もう一人の自分」。それが、無人古書店です。誰もが安心して本の品定めができる、ということです。

次に、「古書店」であることから言えること。

古書店は、「自分だけの図書館」です。ブックオーナーごとに「色」があり、その種々雑多な色の中からお気に入りを見つける。そのプロセスが楽しいわけです。もともと会員制をとっているので、特別感はひとしおです。自分だけのお気に入りの棚の前で、時間の許す限り自分の気持ちと向き合う作業は格別でしょう。

さらに、購入したとしても価格が安いことも、古書店のいいところです。仮に千円以内で気に入った本が2~3冊も見つかれば、十分満足できるのではないでしょうか。

落ち着いた雰囲気の中にありながら、非日常的空間を味わう。誰に気兼ねすることなく長居ができる。購入に至らなければお金を払わなくていい。現金が置いてないから不審者が現れる心配もない。これは、無人古書店ならではのスペシャリティと言えます。

無人古書店に出品する意図

無人古書店に出品する意図は、私の中では2つありました。
1つ目は、蔵書の有効利用。2つ目は、価値観の共有です。

まず、蔵書の有効利用についてです。
もう読まない本をどうするか。あなたも考えたことはありませんか? せっかくですから、価値を感じてくれる人に有効に使ってほしいですよね。私も今まで、本の処分に困ったときは学校の図書館に寄付をするか、ブック〇フに売るかのどちらかでした。でも、ブック〇フって、ひたすら安いです。買い値が(泣)。ニーズのない本は、1冊10円でしか引き取ってもらえません。

でも、この古書店では「1冊10円」なんてことはありません。適正な値付けであれば、納得して購入してもらえます。そして、自宅の書庫スペースもわずかですが空きが出ます。本の整理ができて、購入者に喜んでもらえる。これは大きなメリットです。

次に、価値観の共有ができる点です。
私は本を棚入れする際に、1冊1冊にカードを挟みました。文面は、こうです。

はじめまして。「CTB」(Communication through books)ブックオーナーの〇〇です。
私が興味を抱いた本に、あなたも興味を持ってくれたことを嬉しく思います。
これをご縁に、何かしらのつながりが持てればいいと思い、私のメールとブログのアドレスを載せておきました。
もしよかったらご覧になってください。アイディアの交換も大歓迎です。


カードに記した情報は、「私の価値観」と「ブログアドレス」。ブックオーナーとしての屋号を「CTB」にしたのは、本を媒介にしてコミュニケーションが取れたら面白いんじゃないかと思ったからです。ブログアドレスを明記したのは、もちろん、アクセスを増やすためです(笑)。小さな試みであったとしても、自分から呼びかけないと世界は変わりませんから。

オーナーさんが作ってくれた「屋号」です。同じ本を読んだあなたは、私と同じ価値観を持っている。
つながりを持ちましょうという願いを込めた屋号です。
ちなみに、こちらは私が作ったロゴです。本関係であることは伝わりますよね? キャッチコピーはお気に入りです。

選書方法と1年間で実際に売れた本

選書方法と言っても、もう読まない本を出品しているわけですから、作戦なんてものはありません。ただ、1人のブックオーナーに割り当てられているスペースは基本的に棚1列であることから、陳列できる冊数はせいぜい100冊程度かな?と考えました。

私の手持ちの蔵書は約700冊。そのうち、いらない本は500冊程度。その中から任意の100冊を選ぶためには、何らかの方向性が必要でした。ポイントは、

蔵書をジャンル別に分類する
無人古書店ならではの品揃えにする


この2点です。「1段1ジャンル」と決め、ジャンル内の冊数を絞ることで、「このブックオーナーはこのジャンルが得意なんだ」と感じてもらうことが大切だと思いました。単に不要な本を分類せずに並べるだけでは、お客の方も選びにくいはずです。とても低レベルではありますが、「顧客目線」を意識する機会になりました。

私の蔵書700冊のジャンルの内訳は、「教科指導」「学校教育」「心理学」「サッカー指導者・審判」「サッカー指導」「うつ・自殺」「人間関係」「ビジネス」「その他」です。このうち、実際に出品したのは「心理学」「サッカー指導者・審判」「うつ・自殺」「人間関係」「ビジネス」各20冊程度で、合計100冊程度。

「サッカー指導者・審判」と「ビジネス」を除く3ジャンルは底通している領域と言えますが、統一性がないと言えばない感じです。でも、個々に見ると特化したジャンルになっていて、関心の高い人は少なくないだろうと思いました。

で、実際に売れた本のリストがこちらになります。

『インターネットビジネス・マニフェスト完全版』
『遺書 5人の若者が残した最期の言葉』
『ファーマーズ・ハイ! 徒話を育てる農業家』
『カウンセリングの基本と基礎がわかる本』
『うつからの社会復帰ガイド』
『自殺 生き残りの証言』
『いい人たちの憂鬱 ナイスガイ・シンドローム』
『Google式4ステップ・キャリア戦略』
『死ぬ瞬間をめぐる質疑応答』
『家族という病』
『ポジティブ心理学入門 幸せを呼ぶ生き方』
『うつな人ほど強くなれる』
『自己カウンセリングとアサーションのすすめ』
『LD(学習障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)』
『自己評価メソッド 自分とうまくつきあうための心理学』
『アドラー心理学 よりよい人間関係のために』
『極短小説』
『無気力の心理学 やりがいの条件』
『不道徳教育講座』
『自殺のコスト』
『ツレがうつになりまして』
『その後の ツレがうつになりまして』
『生きるための自殺学』
『論理的に考え、書く力』
『空き家問題 1,000万戸の衝撃』
『屁理屈なし 利益と熱狂を生み出すダイレクト・ブランディング』
『毒になる親 一生苦しむ子供』
『誰にも書ける一冊の本』
『勇気づけの心理学』
『発達障害をもっと知る本 生きにくさからその人らしさに』
『手に取るように心理学用語がわかる本』
『マンガでわかる心理学』
『勝つ組織』
『カウンセリングの話』
『アドラー心理学 シンプルな幸福論』
『フォーカス・リーディング習得ハンドブック』
『アスペルガー症候群』
『思考ツールの教科書』
『非常識でコミュニケーションはラクになる』
『つらい子どもの本 不登校・問題行動への対応マニュアル』

・・・「本を棚入れするときは、見やすさに配慮してジャンル分けをしました」とか言いながら、上記販売リストがジャンル分けされていなくてすみません。並べ替えるエネルギーがなかったということで、ご容赦ください。

こうやって眺めてみると、やはり重いテーマの本に対するニーズは高かったんだな、という印象です。一般的な書店では、ちょっと買いづらいのかもしれません。そう考えると、少しは役に立てたのかな?とも考えます。

無人古書店というビジネスモデル

さて、本記事の核心です。
「無人古書店が立派なビジネスモデルになる」と言える条件とは、何か?

それは、

  • プラットフォーム・ビジネスである点
  • 優良顧客が期待できる点
  • 対象と時期を問わない点

この3点です。

まず、「プラットフォーム・ビジネスである点」についてです。「プラットフォーム」とは、「動作するのに必要な環境」のことを指します。たとえばAmazonやFacebookは、そのシステムやアプリを「場所」として提供することで、情報のやり取りや商品の売買をしています。

無人古書店も、同じ機能を果たします。古書店を経営するオーナーは、大量の本という在庫を抱える必要がありません。店に並べる商品は、限りない個人の手元に存在し、しかも彼らはそれを持て余しています。だからと言って、二束三文で手放すのは忍びない。自分が読んだ本には、誰もがそれなりの思い入れを持っているわけですからね。

つまり、「限りない個人」には、蔵書を出品したいという気持ちがあり、できるだけ高値で、同じ価値観を共有できる人の手元に届けたいという思いがあるんです。なら、本を並べるスペースさえ用意すれば、オーナーは在庫を抱えるリスクを持たずに済みます。オーナーがすべきことは、「本を出品したい人」と「その本にニーズを感じている人」とが出会う場とシステムを提供するだけです。

この古書店は、プラットフォームとしての役割を担うことで、人件費とランニングコストを徹底してそぎ落とすことに成功しています。

次に、「優良顧客が期待できる点」です。
書店を訪れる人たちって、どんな人を想像しますか? ・・・私なら、

活字を通して自分の世界に没頭したいと願い
知的好奇心を満たしてくれる「本」に敬意を払っている人


そんな人をイメージします。本は自分のパートナーで、いつでも相談に乗ってくれる相手。今訪れているこの場が無人古書店だからと言って、好き放題にふるまう人は、まずいないはずです。

また、本の購入にコストを払おうという人たちは、多少なりとも生活にゆとりがある人たちでしょう。現代人は本を読まないし、本にお金をかけるくらいならほかの方面に回すといった考え方が多数派ではないでしょうか?

よって、無人古書店を訪れる人たちは、優良顧客であると言えるでしょう。

最後に、「対象と時期を問わない点」です。
本の購入者は、性別や年齢を問いません。また、「1年で本が一番売れる時期」は、ありません。統計上は明確に売れる時期と売れない時期の区別があるとは思いますが、開業にあたり、そこまで意識する必要はないと思います。

もちろん、その一方でキャンペーンを張ることは可能です。「ゴールデンウィークに青空の下で読みたい本」とか、「クリスマスなのに仕事に忙しいあなたへ」などの言葉を添えて、通年でさまざまなキャンペーンが張れます。つまり、売り方次第でシーズンを乗り切ることが可能なジャンルです。

無人古書店のビジネスモデルとしての可能性。それは、

  • 誰かにとって不要なものを、それを必要とする別の誰かに渡す手助けをする。
  • 信頼できる客層が期待できる。
  • 安定的に収入が見込める。

こういった点にあると言えます。いろんなアイディアが湧いてくるような気がしませんか?

ビジネスモデルは、誰でも構築できる

では、最後に「ビジネスモデルは誰でも、あなたでも構築できる」という話をします。

この無人古書店のオーナーは、2021年4月時点で20歳になっていません。私が彼と最初に話をしたのは2019年11月。その時、彼は高校3年生でした。

*彼とのインタビュー記事は「高校生で起業家の彼が教えてくれたことは、アイディアの価値とチャレンジ精神。」に書きました。
*こちらも関連記事になります。「#新潟,#古書店,#無人,#経営者は高校生。」

高校3年生の彼が、無人古書店ビジネスを成功させるためにアイディアと実行力を駆使したことに、私は驚きを禁じえません。

もちろん、このモデルを実現させるには、それ相応の知識は必要だったに違いありません。ですが、仮に知識があったとしても、それを実行する人は非常に少ないはずです。

「20歳前の若者ができたのなら、山あり谷ありの人生を生き抜いてきたあなたができないわけがない」、とは言いません。大人であるあなたの行動を阻害しているのは、身につけるべきでなかった世間知や先入観、その他もろもろです。

そうではなく、私たちは「やらなければならない」んです。大人が大人として見られるためには、知識の吸収だけで終わらずに、実際にやるしかない。そのように振舞うことでしか、私たちは若い彼らと対等に話すことができないんです。

誰でも、あなたにでも、ビジネスモデルの構築はできる。アイディアを柔軟に飛ばすことで、あなたは生徒と対等に話ができるようになります。生徒から「センセイと話していると楽しい」と言われるようになります。生徒とともに生きている実感が持てるようになります。

そして、いつか訪れる「あなたがリタイアするその日」にも、きっと役立つはずです。

店を出る直前に、落書き帳にメモを残しました(下段・水色の文字)。9歳の娘に書いてもらったものです。

「今までほんとうにありがとうございました。本をとりにきました。ダンボールに全部つめてくれてありがとうございました。」

書いたのは娘の意志で、文章自体はすべて任せました。ありがとう。

追記
本記事のアイキャッチ画像は、出品した本の回収後に娘と近所を散歩した際に撮影したものです。古書店の外観ではありません。そのショッキングな色とコピーが、私たち親子の心を捉えて離しませんでした(笑)。中を覗いたら、パンを焼いていました。どうやらおいしいと評判のパン屋さんだったようです・・・。だから、たまにブラブラ歩いてみるのは楽しい♬

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